「明確な理由もなしに、我等の教えを否定するな。それにしても、今日はやけに冷え込む。火を強くしろ」
ブルっと身震いすると、ドロイロは思い通りにならないことに吐き捨てる。
無意識の中で窓に視線を向けると、信じられない光景を目撃する。
秋といってもまだ寒い時期ではないというのに、窓が白く煙っていたのだ。
その信じられない現象に誰もが驚愕し、驚きを隠せないでいた。
「……レスタ様」
エリザが何気なく精霊の名前に、部屋にいた全員の視線が集まる。
レスタ――冬を司る精霊の名に、ドロイロはある出来事を思い出す。
秋の季節に他の精霊が力を振るう理由は、ひとつしかない。
誰かが、そのように命令をしている。
そう確信したドロイロは苦虫を噛み潰したような表情を作ると、エリザは慌てて口をつむぐがそれは遅かった。
ドロイロはゆっくりとした動作で立ち上がると、大声で叫ぶ。
牢に入れた者達の取調べ、さっさと罪を認めさせろと――
「い、いけません」
「何がいけないというのだ」
「精霊達が……望みません」
エリザも何を言っているのかわからなかったが、懸命に止めて欲しいと訴える。
ユーリッドを取り調べるということは、彼等の神経を逆撫でしてしまう。
そして彼等の怒りは増幅し、その結末は――
「奴は、精霊使いだ。故に、恐れることなどない。精霊とて、支配から解放され嬉しいだろう」
その発言に、全員が一斉に笑い出す。
レスタという精霊の恐ろしさを知らない者達は、実に幸せといっていい。
いや、彼等は知っている。
レスタによって、仲間を失ったのだから。
もし覚えているというのなら、彼等はこのような発言はしない。
エリザは強張った表情でドロイロを凝視していると彼は更に言葉を続け、侮辱に等しい発言を繰り返し醜い笑い方をする。
「精霊使いは精霊なしでは、何もできまい。所詮、ひ弱な小僧だ。それに、もう一人の奴は何も力を持っていない」
「では、早速」
「うむ。咎人は、裁かねば」
再び、笑い声が響く。
自分達の有利な立場を確信しての笑いだろう、その裏に歪んだ何かが見え隠れする。
その時、エリザの首に何か冷たいものが触れる。
同時にひとつの記憶を思い出し、背筋を凍らせる。
また、この感触はユーリッドに連れ浚われた時に感じた感触と同じだった。


