「お前は、更に気に入らない。精霊を従えているそうではないか。何処で、その力を身につけた」
「取調べは、後で行うのではなかったのですか? 聖職者は、簡単に嘘をついていいのですか」
「黙れ」
異端者には、容赦なく暴力を振るう。
それに習い再びエリックにしたことと同じことをしようとしたが、聖職者の身体が制止する。
ユーリッドから何かを感じ取ったのか、額には汗が滲み出る。
先程より、周囲の温度が低い。
ユーリッドはそのことに気付くと小声で誰かと会話をはじめるが、すぐにその会話が途切れてしまう。
それに続くかたちで舌打ちし、状況の悪化に顔を顰める。
彼が、命令を受け付けてくれない。これは珍しいことであり、それだけ機嫌が悪いのは間違いない。
「司教様」
若い男の声に司教ドロイロは何かあったのかその者に何があったのか尋ね、相手の言葉を聞く。
トラブルが発生したのか、司教の表情が一瞬のみ変化する。
その変化を見逃さなかったユーリッドはエリザの身の危険が及ぶことを察知し、更に状況が悪化するのではないかと危惧する。
「わかった。私も行こう」
その言葉と共に、全ての聖職者が立ち去る。
同時に溜息を漏らすのはエリックで、どうやら張り詰めた雰囲気に神経を削がれたようだ。
ガチャリという鍵が掛かるその音にエリックは過敏に反応を示すと、身体を引き摺りユーリッドの側に向かいエリザの身を心配をする。
「多分、大丈夫ですよ。いや、大丈夫ではないか……」
後半部分に向かうにつれ、ユーリッドの声音が弱くなっていく。
確実に精霊達の怒りが強まっており、命令も受け付けなくなっている。
その理由を彼等はわかっていないが、ただひとつ言えることがある。
千年前の再現が近い。
しかし、聖職者はそれさえ気付いていない。
◇◆◇◆◇◆
「私は、嘘は申していません」
部屋の中に反響するのは、少女の声音。
それはエリザのものであり、彼女は必死に自分の意見を貫いていた。
しかしエリザの取り調べは終わる気配がなく、長時間同じ質問が繰り返されるだけ。
その結果、彼女の顔には疲労が滲み精神的に辛かったが、問い詰める者が追求の手を緩めることはない。


