「うわー、凄い」
緊張感が感じられない台詞であったが、その台詞の裏を瞬時に読み取ったユーリッドの顔が歪む。
そして、瞬時に判断する。
この場所が、聖職者によって見付かってしまったと――
「何をしました」
「何もしていないよ」
「なら、簡単に見つからないと思いますが。誰も見付からないように、この場所に来たのですから」
「……あっ!」
何か思い出したのか、ポンっと手を叩く。
そして人差し指を垂直に立てると、歌ったことを告げた。
それも、宿の近くで。
その爆弾発言に近い内容に、ユーリッドの全身は硬直してしまう。
「貴方という人は」
「いや、悪気はない」
「怪しいです」
「ほ、本当だよ」
学者が聖職者に捕まった場合どうなってしまうのか、エリックも理解している。
それを知っていながら目立つ行動を行ったということは、エリックは学者ではなく聖職者――しかし、本人は激しく否定をした。
「本当ですね」
「ほ、本当だよ。ほら、吟遊詩人の性ってやつ。だから、悪気があって歌ったわけじゃないよ」
どうやら「時と場合による」という言葉を知らないらしく、もし知っているとしたら宿の近くで歌ったりはしない。
まさかこのような形で見つかるとは思っていなかったユーリッドは、頭を悩ます。
エリザを抱きかかえ窓を突き破って聖職者から逃げるか、それともエリックに歌ってもらうか。
しかし後者の場合は味方にも甚大な被害を与えてしまうので、選択として有り得ない。
そうなると、前者が適当な判断となる。
エリックは簡単に捕まるような人物ではないので、置いておいても大丈夫と判断できる。
それに、逃げ切れるかどうか不明だった。
もし逃げると決断しそれを実行したとしても追いかけっこの繰り返しで、いずれは捕まってしまう。
それなら、今捕まっても結果は同じ。
またユーリッドの考えの中に、修道院の内部を知りたいという気持ちがないわけでもない。
その時、扉が乱暴に開かれた。
そして彼等の目の前に姿を現したのは、複数の異端審問官。
その姿に、ユーリッドはやれやれと肩を竦めて見せた。


