風の放浪者


「エ、エリザです」

「ふーん、宜しく」

 自己紹介が済んだら、次は素行調査に入る。

 ユーリッドは真実を知っているということで彼のことを信用したが、エリザは修道女なのですぐに信用はできない。

 偽りを述べ、それにより多くの人達を惑わす存在。

 尚且つ学者の敵であり、多くの同胞を死に追い遣った憎らしい者。

 だから必然的に口調が厳しくなり、不信感たっぷりの視線をエリザに向け信用していないということを雰囲気で伝える。

「君達が説く、教えというのを聞きたいな」

「……そ、それは」

 エリックの突然の頼みに、言葉を詰まらせる。

 あれは間違った教えであるので話すべきかどうか迷うエリザはユーリッドに答えを求めるが、答えは貰えなかった。

 「自分で選択を導き出す」そういいたいのだろう。

 エリザは懸命に思考を動かすと結論を出し、そして語っていく。

「……世界は竜によって生み出され、竜によって癒された。そして、人間が精霊を怒らせました」

 はじめはユーリッドから聞かされた真実を話していくが、それではエリックは認めない。

 彼の視線がそのように言っており、偽りの神話を口にする度に痛み出し嫌悪感を抱いてしまう。

「……やはり」

「ですが、私は間違っていると」

「ユー君に、教えてもらったからだろ?」

「そ、それは……」

 エリックの鋭い指摘に、息を呑む。

 彼は神話の根本的な部分と真実を知りながら、態とこのように質問を投げ掛けてきた。

 よって最初から勝ち目はなく、エリザの敗北は確定する。

「でも、受け入れたのは凄いよ。てっきりガチガチの考えを持ち、正しいことを否定すると思っていた」

 唯一エリックが知らないことは、ユーリッドの正体という重大な部分だ。

 彼の正体を知れば、嫌でも受け入れなければいけない。

 しかし、そのことは言えそうで言えない状況にある。

「ところで……」

 エリックが発した言葉が、会話が途切れてしまう。

 急に外が騒がしくなり、人の気配を感じ取ったからだ。エリックはゆっくりとした動作で椅子から腰を上げると、窓の側に近付き下の様子を伺う。

 彼は気まずそうな表情を浮かべるが口調は軽く、どちらかといえば楽しそうだ。