「ユーリッドさん」
エリックの恐ろしさを再び目の当たりにしたエリザは目元に大量の涙を浮かべ、相当怖かったのかユーリッドの側へ駆け寄ると彼の服を掴み小声で「助けて欲しい」と、訴えていく。
「エリック!」
ユーリッドの叫び声に、エリックの身体が反応を示す。
流石にやりすぎたと感じたのか、苦笑いを浮かべつつ失礼なことをしてしまったと素直に謝るが、エリザの気持ちが晴れるものではない。
「ことの重要性をわかってください」
以前に見せた真面目な一面は、完全に消え去っていた。
あの時は学者としての風貌を感じることができたというのに、その欠片さえ存在していない。
今はただのお調子者で、周囲に迷惑を掛けている。
「この場を、和ましてあげようと思っただけだよ」
「結構です」
「ふう、わかったよ」
エリックは大きく溜息を付くと、近くに置かれている椅子に腰掛ける。
そしてティーカップに紅茶を注ぎ一口口に含むと、先程までのイメージが一変する。
これこそ、本来のエリックというべきか。
やっと真剣になってくれたことに、ユーリッドは胸を撫で下ろし安堵する。
「質問していい?」
「どうぞ」
「修道女をどうして連れてきたのかな」
「これは、成り行きですよ。それに、一人くらいは真実を知る権利があっていい。そうじゃないですか?」
ユーリッドの説明に、エリックは紅茶を飲みつつ頷く。
どうやら一応は納得してくれたようだが、エリザは聖職者。
学者であるエリックとは最初から相容れない存在なので、やはり気になるようだ。
「名前は?」
「えっ!」
「お互い、仲間のような関係だろ? 自己紹介くらい、してくれたっていいと思うけど。それとも、修道女は自己紹介をしなくていいのかな? そこまで、傲慢だとは思わないけど」
彼の言い方は、複数のトゲが見え隠れする台詞であった。
ユーリッドと一緒にいるということは安全なのは間違いないが、やはり自分で彼女が安全かどうか確かめたいらしい。
その手始めとして自己紹介がきちんとできるかどうか見極め、信頼に値するかどうか判断するようだ。


