風の放浪者


「好き嫌いがあるなんて、情けないわね」

 ふと、フリムカーシが横から口を挟んできた。

 エリックを嫌がり姿を消していたと思われたが、どうやらエリザをからかおうと姿を現したようだ。

 その証拠に、口許を怪しく歪めている。

 食という行為を行わない精霊であるが、好き嫌いは見逃せないようだ。

 しかし精霊は食べ物を摂取という非効率的なことは全く理解できないので、口を挟んだのはただの面白半分。

 そのことを見抜いていたユーリッドであったが、特に何も言わない。

 フリムカーシが言っていることは正しく、食べ物は大地の恵みであり賜物。

 それを感謝する祭りを行っているというのに、片や嫌いなものを残す。

 本当に感謝をしているというのなら、残さず何でも食べるのが普通だ。

「食べないというのなら、秋を抜かして冬にしましょうか? その方が、わたくしも楽でいいわ」

 夏の終了と同時に雪が降っては、作物を刈り取る前に雪が覆いつくしてしまう。

 一年の半分以上を雪と氷の中で生活しないといけなくなり、結果として餓死者や凍死者が増えてしまう。

 冬を司る精霊レスタは、沈着冷静で何を考えているかわからない一面を有している。

 だが、面白いと判断した場合は違う。その性格を一変させ、のめり込んでしまう。

 一年の半分を冬が支配するということに面白さを見出してしまったら、人間は生活できなくなってしまう。

 それを知らないエリザは、嫌いなキュウリを食べることを渋っていた。

 エリザの行動で人間の運命が決まる。大げさだが精霊は冗談を言う生き物ではないので、やると言ったらやる。

「素敵よね。白銀の世界が広がるなんて」

 刹那、フリムカーシの尾が横に払われた。

 その瞬間、何か重いものが地面に叩きつけられる音が響く。

 ユーリッドは音がした方向に視線を向けると、其処には仰向けで倒れているエリックの姿があった。

「何をしている」

「ふっ! コミュニケーションを取ろうと思ってね」

「見事にふられましたよ」

「そ、そんなことはない。恥ずかしがっているだけだ。そうだ、これは一種の照れ隠しなんだよ」

 エリックのプラス思考も、ここまでくればたいしたものである。

 フリムカーシの攻撃は明らかに拒絶の意思が表れたもので、もし彼が言うように照れで行ったとすれば多少の手加減はする。

 しかし彼女は手加減することなく、エリックに対し攻撃を仕掛け地面に沈めた。