それは、冗談ではなく本気の言葉であった。
それを本能的に感じ取ったエリックは「わかった」と連呼し、首を絞める精霊――フリムカーシの行動を止めてほしいと訴える。
普段は人を小馬鹿にしたような態度を取るエリックであったが、やはり死にたくはないようだ。
エリックの必死の形相にユーリッドは不適な笑みを浮かべると、フリムカーシに離してやるように伝える。
苦しみから開放された瞬間、エリックは顔面から無様に地面に落ちるとシクシクと泣きはじめる。
どうやらフリムカーシに首を絞められたことが、余程ショックのようだ。
「宜しいのですか?」
「いいさ。すぐに、復活を果すよ。エリックを普通に人間と、思ってはいけない。それより、お腹空いているだろ」
ユーリッドはエリザからの言葉を軽く受け流すと、エリックが持ってきた紙袋の中から食べ物を取り出す。
それは、緑の野菜を大量に挟んだサンドイッチ。
それを見た瞬間、エリザの身体は石のように固まってしまい嫌な汗が流れ落ちる。
そう、エリザはキュウリが苦手だった。
キュウリが入ったサンドイッチがエリザの目の前に差し出されるが、受け取りを拒否した。
彼女の行動にユーリッドは嫌いな食べ物が入っていると瞬時に判断し、他の具が挟まれたサンドイッチを探す。
差し出されたのは、ゆで卵が挟まれた物。
今度は嫌がる素振りを見せず受け取ると、大きく口を開け頬張る。
女性とは思えないワイルドな食べ方に、ユーリッドは冷たい視線を向けてしまう。
サンドイッチを片手に此方を見ているユーリッドに気付いたエリザは何があったのだろうと首を傾げつつ、再び大きな口でサンドイッチを頬張る。
その姿にユーリッドは以前彼女が言っていた「修道女に見てくれない」という言葉を思い出す。
天然の性格に加え、ワイルドな食べ方をする女性。
確かに修道女としては失格であり、それ以前に女性としてどうか。
「食欲あるね」
「お腹、空いていましたから」
手渡されたサンドイッチを平らげると、恥ずかしそうに下を向いてしまう。
どうやらもうひとつ食べたいらしく、ユーリッドは紙袋の中から同じゆで卵が挟まれたサンドイッチを取り出すとエリザの手の上にそれを乗せる。
すると先程と同じように、ペロリと食べてしまう。
エリザの食欲の高さに目を丸くしたユーリッドはエリザに残りのサンドイッチが入った紙袋を手渡すと、一個だけ手に取ったサンドイッチを食べはじめた。
いつもなら手渡された物を押し返すエリザであったが、今回はそれを行わない。
どうやら、空腹に負けたようだ。


