風の放浪者


「……ユーリッドさんが言っていたこと、わかりました。この方、本当におかしな人物ですね」

「だろ? 友達など以ての外だ」

「うわー、酷いね」

 傷つけられる台詞を言われようとも、エリックのおかしな踊りは止まることはない。

 寧ろ踊りにテンポがつき、更に怪しさを醸し出す。相手を気絶させる歌の他に、精神力を物凄い勢いで吸い取る踊りのスキルを持ち合わせていたとは、エリックという人物は侮れない。

「で、買ってきたよ」

「あ、有難う」

「もっと、感謝してほしいな」

 エリックは食べ物が入っている紙袋を天高く掲げると、片目を瞑って見せる。

 そのおぞましいまでの行動に、エリザの思考が一時的に停止する。

 一方ユーリッドは、激しい嫌悪感を抱く。

「するか!」

 叫び声と共に、ユーリッドの拳がエリックの腹に入る。

 彼の攻撃に軽く呻き声を上げたエリックは紙袋を落とすが、ユーリッドが地面に落ちる寸前でそれを片手で受け取ると二発目を攻撃に移る。

「緊張感を持ってください」

「……は、はい」

 このような攻撃が飛んで来るとは思っていなかったらしく、エリックは痛みに身体を震わせていた。

 すると、急にエリザが泣き出してしまう。余程怖かったのか、ユーリッドに助けを求めた。

「大丈夫。彼は、人間だから……一応」

 言葉の隅々に刺が見え隠れする台詞であったが、エリザは首を縦に振りユーリッドの言葉を受け入れることにした。

 その冷たい仕打ちにエリックは反論しようとした瞬間、細い指が首を締め付けてくる。

 どうやら「エリック抹殺計画」が、実行されたようだ。

 力が込められていく指にエリックは必死に抵抗を試みるが、首を絞めている人物は精霊。

 彼の抵抗は、無意味そのものだった。

「助けて、ほしいですか?」

「……も、勿論」

「それなら、大人しくして下さい。聖職者相手に喧嘩を売ったのですから、それなりの覚悟はしてもらわないといけません。彼等は、僕を捕まえるでしょうね。あと、学者である貴方も同じです。彼女は、連れ戻しでしょう。ですので、緊張感を持たないと後で大変な目に遭います」