「ひとつだけ言い忘れた」
ふと、ユーリッドが口を開く。
その言葉に、エリザの心臓が激しく鼓動をする。先程まで感じていなかったが、異性として見た瞬間それは変化した。
だから言動ひとつひとつに、意味なく反応をしてしまう。
「フリムが連れてくる人物に、あまり関らない方がいいよ」
不思議な表情を浮かべているエリザにユーリッドは頬を掻きつつ、今まであったことを話していく。
エリックというとんでもない人物について、最低限の予備知識をつけさせる為だ。
「そんなに、凄いのですか?」
「凄いも何も、彼は戦場に赴いたら無敵だよ」
エリザはエリックに会ったことがないから何とも言えないが、確かに彼が戦場にいたら無敵に違いない。
自身の歌声で相手を攻撃し、それにより失神させ戦闘不能に陥らせてしまう。
一滴の血も流さずして勝利。
ある意味で英雄に近い存在となるだろうが、欠点はある。
それは、敵味方関係なく効果を及ぼしてしまうこと。
そして、最終的にはエリックのみ帰還する。
「会ってみたいような、会いたくないような」
「その迷いも、会えば吹き飛ぶ」
エリザは無言で頷くと、エリックがどのような人物なのか尋ねる。
性格は知ることができたが、職業は知らない。ユーリッドとの繋がりを考えると、聖職者とは思えない。
エリザが首を傾げ悩んでいると、彼から答えが提供された。
そして聞かされた職業に、身体が震える。
彼もまた学者。
この街に集まる「学者」という職業の人物に押し潰されそうになってしまうが、救いはある。
それはエリックという人物の性格であり、彼は自称吟遊詩人と名乗っている。
つまり、エリザが悩むことはない。
「お友達に、なれますかね」
「やめておいた方がいいよ。友人関係になってしまったら、あいつはしつこく付き纏うから」
真剣な面持ちで語るユーリッドに、エリザは噴出していた。
その姿は、創造主のイメージからかけ離れていたからだ。
創造主は、威厳がある。
それは勝手な思い込みに違いないが、エリザは今までそう思っていた。
創造主は、普通の少年と一緒。
それに学者と対峙していた時は「怖い」という雰囲気が漂っていたが、エリザに対して普通に接してくれている。
また、喜怒哀楽を素直に表面に出す。
このような姿を見ていると胸が痛くなっていくが、エリザ自身もどうすることもできない。


