君想い【完】



「腹もちもいいし、胃を荒らしたりしないから。ちゃんと食べな。気持ち悪くなったら吐いていいから。」


ダイニングテーブルの上におかずを並べていく。

さりちゃんが作るものより彩りも悪いし、見た目はおいしそうではない。


「ん!おいしい!」


本と栄養素を見て妊娠中のさりちゃんの症状も考えて選んだ食事だが、久々の料理に少し手間取ってしまった。


「名前どうする?」

「気が早いですよ。奥さん。」

「そんなことないわよ。あなた。」


くだらない会話に笑い声を加え、僕たちはいつまで経っても変わっていない。


「30歳になるまでにはほしいと思ってたけど、ずいぶん早かったね。」

「でも僕たちもう結婚して1年だ。ちょうどいいくらいでしょ。大学卒業してすぐ結婚するつもりだったのに、僕の都合で2年送りにしちゃったんだ。」


笑みをこぼしながら、さりちゃんは思い出にひたっていた。


「結婚式もう1回やりたいな。」

「あんな恥ずかしいもの1回で充分だよ!何しろトシが暴れすぎだ。」


結婚式でトシのとった行動を思い出したのか、笑い声をあげて笑いだした。


何かを思い立ったように、鞄から立ち上がり携帯を取り出した。


「香代とゆかりちゃんと麗に同時送信っと。」

「おめでた報告?」

「うん!」


頷いたさりちゃんの目の先は僕の右手だった。

輝かないことを知らない、僕の右手の指輪。


左手にはお金をはたいて買ったプラチナリングが光輝いている。