「暖まった。たったベランダ2つ分の距離も寒くて最悪だった。」
「だから僕が行くっていつも言ってるでしょ。それにベランダ越えなんて危ないんだから。」
「純はいつもベランダ越えて来るじゃん。」
「あなたは女の子でしょ。」
さりちゃんの頭をコツと音を鳴らして叩いた。
「ねえ、純。」
僕の肩に頭を乗せてくる。
さらさらの髪が僕の頬をくすぐる。
「あたし純がいなかったらどうなってたんだろう。」
何かを思い出すように遠い目をして
話し出した。
「小学校の時も、純が来てくれなかったらあのまま連れ去られてあたしは今ここにいなかった。もし誰かが助けてくれてたとしても、あたしの体は言うことを聞いてくれないでしょ?すぐに駄目になる。その度に純が必要になって純がいなきゃ何も出来ない。」
どこを見つめているのか分からない。
その目から涙がこぼれているのが分かった。
僕の手を握り、自分の太股の上に置いた。
「あたしは純がいなきゃ生きていけないんだろうな。って毎日寝る前に思うの。純がいなかったらとっくにあたしは自分で自分を押さえられなくなっていた。祥ちゃんの時も純がいなかったらあたしはとっくに後追いしてたと思う。」
「そうだろうね。僕は否定しないよ。さりちゃんはそんなに強くないからね。」
「いつも思うの。こんな奴をそばに置いて面倒くさくないのかなって。」
「全然。面倒だったら構ってないよね。」
肩に置いていた頭を浮かせ、
顔をこちらに向けた。
久しぶりに目をしっかり合わせた気がする。


