君想い【完】



さりちゃんはベットの前の椅子から立ち上がり、麗を座らせた。

麗は祥吾の手を取り、自分の額に当てる。


「祥吾くん。遅くなってごめんなさい。やっと東龍を潰すことが出来ました。」


僕は隣りにあった花瓶を床に落として割ってしまった。

トシも嬉しそうに広げていた合格通知を床に落とした。


トシから取り上げたケーキの箱が香代の手から落ち、醜い音を立てる。

ゆかはその場に座り込み始めた。


「マジで?」


麗はゆっくりと振り向き、笑顔を見せた。

初めて見る素直な麗の笑顔は夕日に反射して少し見えにくかった。


「どんな手を使ったかは、聞きたいだろうけど聞かないで。結構えげつないから。」


苦笑いをしながら、祥吾の手を下ろした。


「怖いからむしろ聞きたくないです。」


後退りをしながらトシが蚊の鳴くような声を出した。


「稲葉馨さんは?」

「戻ってきたわ。自分のミスでこんな事態を招いたから下っ端からやり直すって。結婚が遠のいた。」


結婚が遠のいても、麗は嬉しそうだった。

携帯を開き、待ち受けの稲葉さんを見せびらかしている。

やっぱり麗も普通の恋する女子高生なんだな、
と実感させられた。


「おいで。さりちゃん。」


会話に入れないくらい泣きじゃくるさりちゃんに向かって手を広げた。


ゆっくり足を踏み出して、
思い切り飛び込んできた。


「よかったね。」


小刻みに首を縦に振っていた。

嬉しそうに笑いながら、泣いている。