「不満がまったくないって言ったら嘘になるけど、でも出先を回るのも皆の意見を聞くのも、自分がやりたくてやってることだから」
水野くんの問い掛けに少し考えを巡らせたような椎名さんは、グラスを置いて静かにそう答えた。
「エリアマネージャーでも、『パートの言うことまでいちいち聞いていられない』って跳ね退ける人もいる。でも、現場の意見を聞かないで良くしていくことなんて出来ないだろ?
だから、そういう人に任せておくくらいなら自分でやろうって思った。まぁ会社からすると、それは要領が悪いっていうことと一緒なんだけどね」
そうだったんだ……。
てっきり、椎名さんの人が良すぎるからうまく使われてしまっているのかと思っていた。
私だけではなく皆も、もしかしたら前マネージャーのように本社の人も、同じように思っている人は多いのかもしれない。
椎名さんって本当にお人好しで、人のために自分が損しちゃうタイプなんだ。……でも。
「……負け組なんかじゃないですよ」
皆が静まり、控えめなBGMの中に、ぽつりと漏らした私の声が響く。
「世間的に見たら昇進も出来ない負け組って言うかもしれないけど、そういう考え方が出来る人は人生での勝ち組です。絶対」
力強く言い切ると、目の前の三人の表情が明るく、柔らかくなる。
少し嬉しそうにする椎名さんは、
「そうやって言ってくれる春井さんもね」
と言って、微笑んでくれた。
水野くんの問い掛けに少し考えを巡らせたような椎名さんは、グラスを置いて静かにそう答えた。
「エリアマネージャーでも、『パートの言うことまでいちいち聞いていられない』って跳ね退ける人もいる。でも、現場の意見を聞かないで良くしていくことなんて出来ないだろ?
だから、そういう人に任せておくくらいなら自分でやろうって思った。まぁ会社からすると、それは要領が悪いっていうことと一緒なんだけどね」
そうだったんだ……。
てっきり、椎名さんの人が良すぎるからうまく使われてしまっているのかと思っていた。
私だけではなく皆も、もしかしたら前マネージャーのように本社の人も、同じように思っている人は多いのかもしれない。
椎名さんって本当にお人好しで、人のために自分が損しちゃうタイプなんだ。……でも。
「……負け組なんかじゃないですよ」
皆が静まり、控えめなBGMの中に、ぽつりと漏らした私の声が響く。
「世間的に見たら昇進も出来ない負け組って言うかもしれないけど、そういう考え方が出来る人は人生での勝ち組です。絶対」
力強く言い切ると、目の前の三人の表情が明るく、柔らかくなる。
少し嬉しそうにする椎名さんは、
「そうやって言ってくれる春井さんもね」
と言って、微笑んでくれた。



