「まさか、この間『首輪を買ってくる』って言ってたのは、小雪ちゃんのじゃなくて私……?」

「正解」

「うそぉ~……!」



また勘違いしていたことがおかしくて笑えるのに、涙が邪魔をして泣き笑いになってしまう。

幸せ過ぎて、どうにかなりそうよ!

泣くのか笑うのかどっちかにしろと自分につっこむけれど、幸斗さんはこんな私も愛おしそうに見つめる。



「千鶴」

「うん……?」

「“椎名千鶴”になる覚悟はある?」



涙を拭い、まっすぐ見据える綺麗な薄茶色の瞳を見つめ返して、私は笑顔で頷く。



「もちろんです!」



迷いなく返事をすると、ヒールの踵をあげ、彼の首に腕を回して抱きついた。

夢でしかなかった素敵なプロポーズを、本当にしてくれる人がいるなんて。

今日の主役は真琴ちゃんだったのに、今世界で一番幸せだと思ってしまう私を許してください。



「ずっと前に『椎名さんについていきます』って言ったこと、一生変わらないから」

「……ありがとう。責任を持って幸せにするよ」



私をしっかりと包み込む真摯な腕の中、喜びを噛みしめて瞳を閉じる。


──首輪の代わりがこの指輪だとするなら、二人を繋ぐリードはきっと運命の赤い糸。

この糸がずっと解けないようにと、私達はきつく抱きしめ合うのだった。





うろつき歩く犬は、出しゃばると棒で打たれるような目に遭うことになるけれど。

だからこそ思いがけない幸運にぶつかることもある。

冴えない日々を過ごしていたって、いつの間にか運命の恋に落ちていることもあるのだ。


  【負け犬も歩けば愛をつかむ。】





     。.:+・*END☆・。