「しかし若い専務だな……」
コツコツと革靴を鳴らしてエレベーターへと向かう椎名さんが、独り言のように呟いた。
「うちの専務みたいな、五十代くらいのおじさんを想像してたからビックリした」
「あは、ですよね。まぁ、社長の甥っ子さんですから」
「でも俺より若いって衝撃的なんだけど」
衝撃的と言いつつ、階の表示を見上げながら淡々と言う椎名さんにクスッと笑いがこぼれる。
「本当に驚いてます?」
「驚いてるよ。でも社長の甥だって言っても、実力がなきゃそんな役職にはつけないだろうから、単純にすごいなって思うよ」
椎名さんが私を見下ろして微笑んだと同時に、エレベーターが着いた。
自然な動作で、扉を押さえていてくれる彼の後に続いて乗り込む。
……椎名さんって、偏った考え方をしない人なんだ。
他人の良いところを見付けて、ちゃんと認められる人なのかも。
再び斜め後ろから彼の姿を見つめ、“社長の甥だから”と、専務が親の七光りであると決め付けたように軽く言ってしまった自分を、少し恥ずかしく感じた。
でも不思議と心は温かくて。
この人はきっと本当に誠実なんだろうと思うと、これから彼と働けることを嬉しく思うのだった。
コツコツと革靴を鳴らしてエレベーターへと向かう椎名さんが、独り言のように呟いた。
「うちの専務みたいな、五十代くらいのおじさんを想像してたからビックリした」
「あは、ですよね。まぁ、社長の甥っ子さんですから」
「でも俺より若いって衝撃的なんだけど」
衝撃的と言いつつ、階の表示を見上げながら淡々と言う椎名さんにクスッと笑いがこぼれる。
「本当に驚いてます?」
「驚いてるよ。でも社長の甥だって言っても、実力がなきゃそんな役職にはつけないだろうから、単純にすごいなって思うよ」
椎名さんが私を見下ろして微笑んだと同時に、エレベーターが着いた。
自然な動作で、扉を押さえていてくれる彼の後に続いて乗り込む。
……椎名さんって、偏った考え方をしない人なんだ。
他人の良いところを見付けて、ちゃんと認められる人なのかも。
再び斜め後ろから彼の姿を見つめ、“社長の甥だから”と、専務が親の七光りであると決め付けたように軽く言ってしまった自分を、少し恥ずかしく感じた。
でも不思議と心は温かくて。
この人はきっと本当に誠実なんだろうと思うと、これから彼と働けることを嬉しく思うのだった。



