「ま、待って! ごめんなさい!」

「もういい。寝てやる」

「えぇぇ!」



ちょっと拗ねてる椎名さん、可愛い……じゃなくて!

これからお泊まりするつもりで荷物も気持ちも準備してきたのに、寝られちゃったら私惨めすぎない?

鍵を開ける彼に何と言おうかとあたふたしていると、ドアを開けた瞬間、手を引かれて中へ連れ込まれた。



「わ、椎名さ──!?」



バタン、と閉まる扉。

玄関の壁に押さえ付けられた背中と手首。

言葉を封じる熱い唇──。


吐息ごと食べてしまうように深いキスをした彼は悪戯な笑みを浮かべ、呼吸を乱した私を妖艶な眼差しで縛り付ける。



「冗談だよ。少しからかってみたくなっただけ」

「……もう。酔ってるから、本当に寝ちゃうのかと」

「たいして酔ってないよ。君を抱くことくらい出来る」



その言葉に、胸が、身体の中心部がきゅうぅと締め付けられた。



「ずっと欲しくて堪らなかったんだから、君の全部が」



待ちきれないというように私の首筋に唇を寄せ、熱く、切なく囁く彼に、私の想いも一気に溢れる。



「……もらってくれますか? 若くもなければ色気もない、ぱっとしない女だけど」

「俺にとってはどんな君も可愛くて仕方ないよ」



蜜のようにとろけそうな言葉をかけ、甘く微笑んだ彼は、首に手を回してしがみつく私を軽々と抱き上げて寝室へ向かった。