負け犬も歩けば愛をつかむ。

一瞬で脳内はピンクに染まって、きゃー!と心の中で悲鳴を上げる。

でも、でもね。

正直、私は風邪だろうが疲れていようが、身も心も目一杯愛されたいんだけどな……。


本心ではそう思いながらもしおらしく黙り込んでいると、私の気持ちを知ってか知らずか、椎名さんは耳にキスをするように囁く。



「でも、我慢するのは今日だけね」

「え……」

「明日、打ち上げが終わったら家においで」



明日は皆でパーティーの打ち上げをすることになっている。

それが終わったら家に、ということは……。

腕の中で身体を捻り彼を見やると、整った顔が色っぽく微笑む。



「遠慮なく、君をもらうから」



あぁもう、さっきから心臓がドキドキと鳴り止まない。

でも嬉しいのは確かで、俯きながらこくりと頷くと、熱い頬に手を添えられる。

目線を上げた時にはもう唇が塞がれていて、ここが駐車場だということも忘れ、さっきよりも濃厚な口づけを交わした。



キスをして、また抱きしめ合って。

これじゃ早く帰れなくて意味ないか、と笑い合う私達を、深い闇を照らす三日月と無数の星だけが呆れたように眺めていただろう。


いい歳した大人だって、無邪気な恋愛がしたいのよ。

そう開き直って、星空にこの幸せっぷりを見せ付けるように、私は彼にぎゅっと抱きつくのだった。