「……どうやら俺達は思いっきり勘違いしてたみたいだな」
「ですね……」
すべての業務が終わった夜九時半。
三兄弟とヘルプのおじさま二人は、気を利かせて疾風のように去っていってしまい、残された私達はこれまでのことを話しながら駐車場に向かって歩いていた。
「まさか私が専務のことを好きだと思われていたなんて」
「絶対俺じゃないと思ってたからね。なんかおかしいなと思うとこもあったんだけど」
椎名さんの勘違いにクスクスと笑いがこぼれてしまう。まぁ、笑える勘違いしていたのは私も同じなんだけど。
「でも君が誰のことを好きでも、今日パーティーが終わって一段落ついたら、気持ちを伝えようって決めてたんだ。そうしたら専務に迫られてるのが見えたから、いてもたってもいられなくなって」
やっぱり、『話したいことがある』っていうのはこのことだったんだ。
私のことを部下ではなく、一人の女性として想ってくれていることが単純に嬉しい。
「私も同じなんですよ。今日告白しようって思ってました」
「本当に? 俺達考えてること一緒だったのに、何でこんなに遠回りしたんだろうな」
「ね」
顔を見合わせて笑う私達。
本当に余計な遠回りをしたけれど、その分愛情を蓄えて、彼を想う気持ちは初めの頃よりずっと大きく深くなったと、自信を持って言える。
だからきっと、全部必要なことだったんだよね。



