負け犬も歩けば愛をつかむ。

──今度は私の脳天に雷が直撃したみたい。

まさか、本当に椎名さんが私を……!?


驚きのあまり、身体は痺れたように動けない。

けれど、彼の熱を帯びた瞳に捉えられると、心臓は激しく暴れ回り始めた。



「……そうですね、相子ということにしましょう」



そう言った専務は、見つめ合う私達を見てやれやれ、とでも言うような笑みをこぼす。



「どうぞ、勝手に仲良くやってください。あぁでも、場所を考えた方がいい。スルスの皆さんは覗き見が好きらしいですからね」

「え?」



意味深な笑みを残し、専務は「では」と軽く会釈して休憩コーナーを出ていく。

その姿を見送っていると、何やら後ろから視線を感じる……。まさか。

バッと振り向くと、またしても食堂の陰に隠れて私達の様子を伺う“だんご三兄弟”が!



「皆っ! また!?」

「食堂に出てた椎名さんが突然駆け出したもんだから、どうしたのかと思ったのよ! それより……」

「やっぱり、マネージャーは千鶴さんのこと……!?」



期待に満ちた目をキラキラさせた三人を代表して、真琴ちゃんが言うと。

椎名さんは困ったような笑みをこぼしながらも、愛でるような優しい眼差しで私を包み込んで頷いた。



「そうだよ。俺は彼女のことが好きなんだ」