「最後の社長の挨拶と、皆からあなた方に送られた拍手がそれを物語っていた。皆満足していたし、とてもいいパーティーになりましたよ」



これまで見たことがないような柔らかな表情で言う彼の言葉は、嫌味なんかではないことがわかる。



「これからも、よろしくお願いします」



……信じられない。

あの専務が私達に頭を下げた。この人、本当に天羽薫?

そんな失礼なことを思いながら椎名さんを見上げると、彼も拍子抜けしたような表情で私を見た。



「……しかし」


え、“しかし”?



「椎名さん、あなたは僕の大切な女性の恋心を踏みにじって泣かせましたね。その責任はどう取ってくれますか?」



えぇーまだそんなこと言う!?

でも、九条さんのことをやっと“大切な女性”って認めたわね!

呆れと胸キュンで忙しい胸を押さえ、目をしばたたかせながら意地悪な笑みを浮かべる専務を見ていると。

「お言葉ですが」という不機嫌そうな声が、私の頭上から聞こえた。



「専務こそ、俺の好きな人を散々悩ませた挙げ句、今唇を奪おうとしたでしょう。だからおあいこです」



……好きな、人?



「冗談でも、もう二度と千鶴には触れさせない」