「これは私の勝手な憶測なんですけど……専務は私達のことが嫌いって言うより、羨ましかったんじゃないですか?」



皆で一つの目標に向かう、仲間意識を持った私達が。

皆に慕われて、他人のことも素直に認めることが出来る椎名さんが。

きっと、自分には出来ないことをしている人間だから。



「専務も、一人で頑張ってないでたまには誰かを頼ったらどうですか? ほら、九条さんとか。彼女は、専務が思ってるよりずっとあなたのことを理解して、支えてくれるはずですよ!」



ふふっと笑ってみせると、腕組みをして黙って聞いていた専務は、壁から身体を離して一つ息を吐いた。



「……本当に面白いことを言うね、春井さんは」



そして、何故かこちらへ近付いてくる彼に、トレーを置き去りにしたまま思わず後ずさりする。

ヤ、ヤバい。この人に接近される時はロクなことがないもの!



「君達が羨ましいだって? 笑わせてくれるね。君達の仲間に入るくらいなら一人で飢え死にした方がマシだ」

「あの専務、笑ってませんけど……」

「だが、君達はただの負け犬ではなさそうだ」

「え?」



壁側に追い詰められたことと、改心したような言葉に反応して動きを止めると、彼の手が突然私の顎をくいっと持ち上げた。

ビクリと身体を跳ねさせ見開いた私の目に、妖艶に笑う専務の綺麗な顔が映る。

そして近付く薄めの唇が紡いだ言葉は。



「君を飼ったら退屈しないだろうな。今まで虐めてばかりだったし、今度は可愛がってあげようか」