にこやかに笑う社長が「それと!」と言うと、拍手は一旦治まり、再び皆が社長に注目する。



「この会社の宝である社員の、源となる存在も忘れてはなりません。毎日の食事と、今日のこのパーティーのために豪勢な料理の数々を作ってくれた、ラ・スルスの皆さんです」

「……へ?」



まさか自分達のことまで話に出るとは思わず、顔を見合わせる私達。

そんな私達を見て、社長はクスッと笑みをこぼす。



「ラヴィー・メルベイユという社名は、フランス語で“素敵な人生”という意味です。
人生を素敵なものにするためには、美味しい食事が付き物。スルス無くして、我々が働くことは出来ません。彼らも我々の大切な仲間です」



社長は、今度は私達に向き直ると、穏やかな表情で語りかけた。



「今日の料理も大変満足のいくものでした。これからも、我々の源となる食事の提供をお願いしますね。いつもありがとう」



そう言って拍手をする社長に続き、社員の皆が私達に笑顔を向けながら手を叩く。

その中には菅原さんも、九条さんも、決して笑顔ではないけれど清々しい表情をした専務もいる。

未だに状況を飲み込めないような、ぽかんとした表情の私達を、温かな拍手が包み込んでいた。