「失礼します」



椎名さんに続いて中へ入ると、そこに広がるのはいつ来てもセンスの良さを感じる空間。

一階の雑貨屋と同じ、ヨーロッパ風のインテリアで統一され、応接用のソファーやガラステーブルが置かれている。


まるでホテルの一室のような部屋の奥にあるデスクには、片肘で頬杖をついて座っている天羽専務がいた。

私達の姿を見ると、にこりと笑みを浮かべて腰を上げる。



「こんにちは。もしかして、新しく来たマネージャーさん?」

「えぇ、はじめまして。椎名と申します」



こちらへやってきてくれた専務に椎名さんが名刺を差し出し、和やかな雰囲気で挨拶をしているのを、私は斜め後ろでアンケート用紙を手に見守っていた。


するとドアがノックされ、「失礼します」と今度は女性の声が響く。

一礼して中へ入ってきた細身で綺麗な女性に、専務が声を投げかけた。



「あぁ、九条さん。悪いけどちょっと待っててもらえる?」

「すみません、お取り込み中に」



何かの書類を手に、私達に向かって軽く会釈する彼女は、メルベイユの社員である九条 玲華(クジョウ レイカ)さん。

人形のようにつやつやとしたストレートの長い髪の毛がよく似合う超美人で、おまけにスタイルも良くて頭脳明晰。

生まれながらの勝ち組と言ってもいいくらいの彼女は、私達の間でも注目の的になっているのだ。