息巻く私の勢いに、面食らったように固まる専務。

いつもけなされっぱなしじゃ悔しいもの、今日こそはキッパリ言ってやるわ。



「負け犬になる勇気を持てる人が、恋愛においての勝ち組に入れるんだと思います。私は玉砕覚悟で彼に告白します。弱虫な専務とは違うんだから!」



どうだ、まいったか!

ふんっと腰に両手をあてて自慢げに胸を張ると、専務はカクリと俯く。

おっ、結構効いたかしら?

してやったり、とほくそ笑んだのもつかの間、肩を震わせる専務からはクックッという声が聞こえてくる。そして。



「はははははは!!」

「っ!?」



突然天を仰ぎ、声を上げて笑う彼にギョッとする。

初めて見る爆笑する姿に、気味が悪いとさえ思った。



「な、何がおかしいんですか」

「僕を負け犬だの弱虫だのと罵った者は初めてだ……。はははは、不愉快極まりない」



うっ……、笑ってるけど目が全然笑ってない!



「君の負け犬根性を出し惜しみしない持論はよくわかった。まあまあ面白い意見だったよ。
……だが、気に食わないものは気に食わない。椎名さんに責任を取らせようとするのはもうやめようと思ったが、やはりそれはパーティーの出来次第ということにしよう」

「えぇ!?」

「玲華のこと以前に、僕は君達のことが大嫌いだからね。恋愛の勝ち組さん」



にこりと感情がこもっていない笑みを浮かべ、“大嫌い”を強調して嫌味を言う彼は、いつも通りの腹黒狼にすっかり戻っているのだった。