椎名さんの返答に、ニマニマと満足げな表情をする三人は、

「じゃあ我々は厨房に戻りますので、どうぞごゆっくり~♪」

と言い残し、私を置いて部屋を出て行った。

後でからかわれそうな予感がすっごいするけど……。


パタンと閉まるドアを見つめていると、椎名さんがくるりと振り向く。



「悪いね。忙しくないかな?」

「だ、大丈夫です! 私、午後はだいたい事務仕事をしてて、厨房の方は皆に任せてるので」

「そう、よかった。春井さんはチーフになったばかりだけど、よくやってくれてるみたいで助かるよ。スルスの評判も良いし、これからもよろしくね」

「はい……!」



そんなお褒めの言葉をもらえるとは思わず、素直に嬉しくて顔が綻ぶ。

あぁ、その大きな男らしい手で頭ナデナデしてもらいたい……。

そんな妄想を勝手に繰り広げている間にも、椎名さんはビジネスバッグから書類の束を取り出す。

ダメダメ、私も仕事モードに切り替えないと!



「さっそくなんだけど、これ今月のアンケート。ここはまず専務に確認をとるって聞いたけど」

「はい、渡しておきますね」



ここでは毎月食事についてのアンケートをとることになっていて、本社で作成されたその用紙は、まずメルベイユの専務に確認してもらうことになっている。

マネージャーからアンケートを受け取り、渡しに行くのも私の仕事の一つ。



「じゃあ今俺も一緒に行くよ。挨拶したいから」

「わかりました」