あぁ、孤独死する時ってこんな感じなのかな……

なんてバカなことを考えながら怠すぎる身体を横たえていたら、突然椎名さんが現れて、夢なんじゃないかと思った。

でも、初めて彼が声を荒らげたことと、『何でこんな時間まで残ってたんだ』という言葉で、現実に引き戻された私は。

いまだに仕事を終わらせられない自分への落胆と、何故かはわからないけれど椎名さんが来てくれたことへの安堵感……

様々な感情が入り乱れて、一度は止まったはずの涙が再び溢れてしまっていた。すると。



「千鶴──」



久々に名前で呼ばれ、抱き寄せられた椎名さんの腕の中は、驚くほど温かくて心地良い。

一瞬、絶不調な身体のことを忘れるほどだった。



「無理するなよ……俺がいるだろ」



耳元で、吐息混じりの苦しげな低い声が響き、心臓がわし掴みにされたみたいにキュンとする。



「あまり心配かけさせないでくれ」

「……すみません」



心配、してくれるんだ……。

大丈夫です。あなたに抱きしめられただけで、嘘のようにラクになっていく気がするから。


抱きしめられてほんの少し落ち着きを取り戻していると、不意に部屋に明るさが戻った。

電気が復旧したらしい。時間にするとほんの十分足らずだったみたいだけれど、私にはとても長く感じられた。


それと同時に彼も私の身体を離す。けれど、両腕は優しく掴まれたままだ。

明るくなったことで改めて至近距離にいることを感じさせられ、こんな状況なのに胸が高鳴ってしまう。