すぐさま駆け寄り、横になっている彼女を抱き起こす。



「どうした、大丈夫か!?」

「……しぃ、なさん……?」



暗がりに目が慣れ、俺の腕の中で重たそうに瞼を押し上げる彼女の顔がはっきり見えてくる。

身体が熱い……熱があるのか?

額や頬に手をあてる俺を見上げる彼女は、驚いたように目を開く。



「なんで……」

「それはこっちの台詞だよ。熱があるんだろ? それなのに何でこんな時間まで残ってたんだ!?」



つい声を荒らげてしまい、春井さんはビクッと肩を震わせる。



「ご、めんなさ……っ」



彼女の目から大粒の涙が溢れ出す。

そして何かを我慢していたように、子供みたいに泣き始めてしまった。


少し言い方がきつかったせいかもしれないが、それだけで彼女がこんなに泣くとは思えない。

何か辛いことがあったのだろうか。何故一人で抱え込む?



「千鶴──」



彼女を胸に引き寄せて、髪に手を差し込み、思いきり抱きしめる。

泣きじゃくる彼女がものすごく弱々しく見えて、衝動を抑えることが出来なかった。



「し、椎名さん?」



俺の肩で、泣きながらも戸惑うような声を出す彼女の後頭部を撫でる。

その髪に顔を埋めるようにして、声を絞り出した。



「無理するなよ……俺がいるだろ」



どんなことでも構わない、辛い時には頼ってくれよ。

上司という立場を利用してでも、俺は君にとってそういう存在でありたいんだ。

君を愛しているから──。