元々壁際にいた私は、驚いて下がったものの壁に背中をぶつけ、何故かあと三十センチほどの距離に彼が迫ってきていた。

目をぱちくりさせる他の三人も、若干私達から離れつつ成り行きを静観している。


そして、瞳の色素が薄い茶色だということがわかるくらい間近に来た彼は、私の顔に向かって手を伸ばす。

えぇぇ、何っ!?

ほんの少し彼の指が頬に触れ、ドキン!と一際大きく心臓が跳ねた瞬間。


──ピッとマスクが下ろされ、被っていた帽子を取られた。

そして、露わになった私の顔を確認した椎名さんは、ふっと笑みをこぼす。



「君、なんとなく見覚えがあると思ったら、昨日コンビニで会ったコだったのか」



お、覚えていらっしゃる!!



「よく、わかりましたね……」

「何か感じるものがあってね。こんなふうにまた会うなんて、縁があるのかもな」



そう言って、ワイルドな顔に甘さを含んだ笑みを浮かべる彼に、胸の鼓動は早まるばかり。

……久しぶりだ、この感じ。乙女のハートが動き始めている!



「“運命の出逢い”だな……」



私達の様子を見てボソッと呟かれたチャラ男の言葉は、お花が咲いた脳内に、その後しばらくふわふわと浮かぶことになるのだった。