その前に、今はパーティーを成功させなければならない。まだ専務に交渉しなければいけないこともたくさんある。

うちの会社のやり方としては、チーフである春井さんにそれを任せるのが普通だ。

だが、もしさらに何か無理なことを要求されたら、彼女は断れないかもしれないし、理不尽なことを言われたら嫌な思いをするだろう。

そう考え、彼女の代わりに俺が交渉しに行くことにした。


……いや、もう一つ別の理由もあるな。

彼女と専務を二人きりで会わせたくないという、自分勝手なワガママが。



数日後、俺は春井さんから借りたノートとメニュー表の束を持って、天羽専務のもとへ向かった。

専務室でゆったりと椅子に座ってデスクワークをしていた彼は、俺にいつもの紳士的な笑みを向ける。



「こんにちは。あなたが一人でここへ出向くなんて珍しいですね」

「えぇ、今日は色々なご相談がありまして」



応接用のソファーに促されお互いに腰を下ろすと、さっそくメニュー表を手渡した。



「こちらが我々が考案したパーティーのメニューです。飲み物はメルベイユさんの方で用意されるとのことなので、こちらには入っていませんが」

「どうも」



それを受け取り一通り目を通した専務は、頷きながら「……いいと思いますよ」と一言告げた。