「あ、いえ! あの、も、もう終わりましたので、どどどうぞ……!」



ものすごくどもりながら、ナントカ倶楽部のネタのように“どうぞどうぞ”とジェスチャー付きで中へ促す私。

にこりと微笑んだ彼が部屋に上がると、興味津々な様子の三人が息を呑んだのがわかった。



「あらまぁ~イイ男だわね!!」

「超~カッコイイ!! こんな人がうちの会社にいたの!?」

「え、この人が負け組? うっそ、マジで?」



皆口々に驚いた声を上げるけれど、マスクの下でコソコソと言っているだけだから、かろうじて本人に聞こえてはいないだろう。

何故か部屋の隅に固まる私達に向き直った椎名さんは、改めて挨拶をする。



「皆さんはじめまして、マネージャーの椎名です。これから一緒に協力し合っていきましょうね。よろしく」

「「よ、よろしくお願いしまーす……!!」」



誠実さが滲み出ているのがわかる彼に向かって、ぺこりと頭を下げる三人だけれど、私だけはぎこちない動きしか出来ないでいた。

そんな私に気付いた真琴ちゃんが、肘で私をつんつんと突く。



「ちょっと、千鶴さん! いくらイケメンだからって緊張しすぎです」

「ち、違うの、彼は昨日……!」



コソコソと話す私達に目線を移した椎名さんは、私にピントを合わせてまじまじと見てくる。

そして、何故か私に近寄って……って、え?

なんか近い! 近い!