「だから、気を付けた方がいいですよ」

「え?」



急になんだか不吉なことを言われ目線を上げると、九条さんは神妙な顔で話を続ける。



「スルスの皆さんって仲が良さそうじゃないですか。薫はそういう人達を馴れ合いみたいで嫌だって言うんですよ」



あぁ……なるほど。これまでの専務の言動を思い返すと、俺達のことをあまり良く思っていないだろうことはわかる。



「あの人、昔からちょっと捻くれた所があったけど、今はそれにかなり磨きがかかって性格歪みまくってるんで。
椎名さんが来てからさらにスルスがいい雰囲気になってるのが私にもわかるから、あなたに何か嫌がらせみたいなことをしそうで心配なんです」



眉根を寄せて「性格歪みまくってる」と言う彼女に少し吹き出しそうになるが、もし本当に彼がそんなことを考えているとしたら穏やかな話ではない。

……ん? もしかして。



「まさか、記念パーティーの件も嫌がらせの一環なのか……?」



顎に手をあて独り言のように呟くと、九条さんは「そうかも」と言って頷く。



「スルスの皆さんに頼めないのかって話が会議で出たのを、薫が後押ししたらしいですからね。メニューから調理まですべて任せるっていうオプションまで付けて」

「やっぱり……」



彼が好意的にあの要求をしてきたようには思えないからな。

やられた、という思いで頭を抱えると、九条さんは気の毒そうに小さく笑った。