負け犬も歩けば愛をつかむ。

すると、カモミールティーを一口飲んだ九条さんは咳払いをし、なんだか緊張したような面持ちでこんなことを問い掛ける。



「……椎名さんは、そういうプレゼントをあげたいと思う人はいるんですか?」



コーヒーを口につけたまま一瞬止まった俺は、苦笑しながら答えた。



「いるよ。受け取ってもらえるかは別として」

「それって、どういう……?」

「俺の片想いってこと」



そう口にすると、喉を通る黒い液体の苦さがさらに増した気がした。

目を伏せて「そうなんですか……」と呟いた九条さんは、すぐに顔を上げてまっすぐ俺を見据えると、今度は力強く言い放つ。



「片想いなら、まだ私にもチャンスがありますよね」



……チャンス?

彼女の言葉の意味をゆっくりかみ砕き、かなり遅れて理解する。

そういえばさっきも、『ただ椎名さんに会いたくて』と言っていたよな?

まさか、彼女は俺のことを──?


にわかには信じられず、半信半疑のまま九条さんを見つめ返すと、彼女は端から見てもわかるくらい頬を赤く染め、目を逸らした。



「初めて見た時から、その、一目惚れしちゃって……」



たどたどしく言う彼女に、俺は狐に摘まれたような気分になる。

そんなに前から俺なんかのことを想ってくれていたのか? 本当に信じられない。



「俺はてっきり、専務と良い仲なのかと……」



素直に言うと、彼女はあからさまにツンとした表情に変わる。