負け犬も歩けば愛をつかむ。

「はい?」

「お忙しいところ、呼び止めてしまってすみません! あの実は、仕事のことで椎名さんに相談に乗ってもらいたくて……今度お時間いただけませんか?」



相談? これまでただの顔見知りに過ぎず、今初めて会話しただけの俺に?

違和感を覚え、首をかしげながら曖昧に微笑む。



「仕事の相談なら、俺じゃなくてメルベイユの社員さんの方がいいんじゃ……」

「いえ! 社外の人の意見を聞かせてもらいたいんです。誰にも相談出来なくて、もうどうしたらいいか……」



眉を八の字にして肩を落とす彼女。そんなに深刻な話なのか?

尚更俺じゃない方がいいような気がするのだが、こうして助けを求められているのに突き放すことは出来ない。

俺は何故か昔から相談を持ち掛けられることが多く、そういうのは基本断らない性格だし。



「君、名前は?」

「あ! すみません、名乗りもしないで。九条玲華といいます」

「九条さん。来週の火曜なら確実に時間取れると思うけど、それでもいいですか?」

「……はいっ!」



ぱぁっと表情が明るくなり、笑顔を見せる九条さんはとても眩しくて、誰が見ても美人だと思うだろう。

だが、心を揺さ振れるような、あの何とも言い難い感覚は抱かない。

やはりあの子は特別なのだと、こんな時に改めて実感するのだった。