負け犬も歩けば愛をつかむ。

「もしやるとして満足出来ないものを提供した場合、それなりの処置を取らせてもらいますがいいですか? ──椎名さん、あなたに」



そう言った専務の俺を見る冷ややかな瞳と、口元に浮かべる笑みも挑発的で、怒りに似た感情がじりじりと胸の奥に燻り始める。

責任云々の問題ではなく、俺達にはそんな大層な仕事をやってのけることは出来ないだろうと言われているようで。


最初から失敗した場合の話をされるなんて、そうなると決め付けられているように思えてしまう。

そんな固定観念は払拭したい。俺達を見くびってもらっては困るんだ。



「納得出来ないものをお出しするつもりはありません。やるからには成功させます、必ず」



自らを奮い立たせるためにも、強気な言葉を返した。

やるとなったら生半可な働きはしたくない。俺にもそれなりのプライドというものがあるから。


……が、仕事のことでは強気に出られても、恋愛はそうもいかない。


春井さんに用があるらしい専務は、彼女に声を掛けるとその華奢な肩をぐっと抱き寄せた。

その瞬間、息が止まりそうになる。

春井さんの耳元で専務が何かを囁くと、少し困惑した様子の彼女は肩を抱かれたまま扉の外へと消えていく。


……何だ、今のやり取りは。

まさか、専務の気持ちも春井さんへと向かい始めたのか?

いや、もしかしたら始めから二人は両想いなのに、彼女が勘違いしていただけなのかも……?