負け犬も歩けば愛をつかむ。

「春井さん、住所言える?」

「“春井さん”じゃなくて“千鶴”でーす」

「はいはい。住所教えてくれる?千鶴」

「教えなーい。ふふふ」

「こら」



おちゃらける彼女に苦笑しつつ助手席に座らせると、すぐにまた寝ようとする。



「ちーづーる。いい加減帰らないと──」

「だって……まだイヤなんだもん……」



シートベルトを握りしめ、ぎゅっと目を閉じ子供のように駄々をこねた彼女は、そのままスーッと再び眠りについてしまった。

俺は深く息を吐き出し、髪をそっと撫でながら呟く。



「そんなこと言うと、勘違いするだろ……」



まだ帰したくないのは、俺だって一緒なんだよ。


もどかしさを感じながらも、結局住所を聞き出せなかったため、ひとまず俺のマンションへ向かうことにした。

到着すると春井さんを車に寝かせたまま、まず玄関の鍵とドアを開けておき、彼女を抱き抱えてベッドまで運ぶ。

その脇に腰を下ろし、気持ち良さそうに寝息を立てる彼女を眺めながらネクタイを緩めた。

むにゃむにゃと、ちゃんとした言葉にならない寝言を言う姿にクスッと笑みがこぼれる。


……が、暑いのか掛けてやった布団を剥いでしまう彼女。

その拍子にひらりとめくれたTシャツの裾から、白く細い腰が露わになった。

無防備過ぎる姿から思わず目を逸らし、頭を抱える。


生殺しだ……何かの罰ゲームかこれは。