負け犬も歩けば愛をつかむ。

このままもう一口焼酎を飲んで潰れてしまいたい……なんて思ったのは初めてだった。

迷惑をかけるだけだからそんなことはしないが、やけ酒したくなる気持ちはわかるな……。


少々ショックを受けた会はお開きになり、俺は春井さんの車に乗せてもらって帰ることに。

芳香剤の甘い香りが漂う助手席に乗り込んだだけで胸がざわめくのに、彼女も乗り込んでくるとさらにドキリとしてしまう。


仕事で車に女性社員を乗せたことは何度もある。だが、それとは明らかに状況が違う。

触れようと思えば、いくらでも触れられるのだ──想いを寄せる人に。しかし。



「椎名さんはそんなことする人じゃないでしょう」



こっちはよからぬ欲求が沸き上がるのを必死に抑えているというのに、彼女はまったく警戒した様子はない。

俺はそんなに対象外なのか? ……そう思うと心底虚しくなる。

教えてやりたいよ、俺も普通の男なんだってことを。



「油断するなよ。俺だっていつ狼になるかわからないから」



つい本音の忠告をこぼしたが、本気でそうならないようにとしっかり瞼を閉じ、狸寝入りを決め込むのだった。


……しかし、ものの数分で本当に眠りに落ちてしまい、ゴトンと何かが落ちる音と、身体に感じる重みで目が覚めた。

そして、パッと開いた目に飛び込んできたのは春井さんの小さな顔。