この中で一番の情報通は、得意げな笑みを浮かべる園枝さんだ。

メルベイユの社員とも親しげに話しつつ色々な情報を貰ってくるから、私達は耳年増になっていくというか、何と言うか。


園枝さんは「でも、煎餅が言うにはね」と、すっかり食べ物と化してしまった前マネージャーから聞いたという話を続ける。



「その新しく来る“椎名さん”って人、実はサブマネージャーなのに、エリアマネージャーと同じような仕事してるんですって」



サブマネージャーとは一般的に言う課長のようなもので、部長クラスのエリアマネージャーよりは下の位置付けになる。

本来は主に本社で働くから、出先の食堂のことは任されないはずだけど……？



「すっごく性格はいいらしいんだけど、良すぎて会社に都合良く使われちゃってるみたいよ？　会社からしてみれば、サブマネのお給料でそれ以上の仕事してくれるんだから、ありがたいことだろうけどねぇ。でも、あれじゃいつまで経ってもこれ以上の出世は出来ないだろうって」

「へぇー。マネージャーってのも名ばかりで、つまりは“何でも屋”ってことか」



茹でたアスパラをザルにあけながら水野くんが言い、彼の斜め前方にいる私に意地の悪い目線を向ける。



「ちづが来てからここ負け組の集まりになっちゃったねー。また一人増えそうだし。やっぱ類は友を呼ぶってやつ？」



お気楽な調子で笑うチャラ男の頭を、手に持っていた大根でかち割ってやりたくなった。