「あちゃー、全然ない?」

「あとちょっとしかないね。これじゃ足りねーわ」

「しょうがない、後で買ってくるか……」

「頼むよ姉さん」



チャラ男に釘を刺されて口を尖らせる私に、椎名さんは「俺が買ってこようか?」と言ってくれたけど、さすがにそれを頼むのは申し訳なさ過ぎる。

結局、ランチを終えた後に皆には先に休憩しててもらって、私は買い出しに向かうことにした。

明後日のタイムテーブルを大まかに考えてくれていた椎名さんも、そろそろ本社へ戻ると言っていたから、私が買い物を終えて帰ってくる頃にはもういないかもしれない。


……それなのに。

メルベイユから車で五分の程近いスーパーで、買い出しついでに皆に何かお土産を買っていこうかと品定めしていると。

見つけてしまった、あの日と同じ“クリームたっぷりいちごミルクプリン”を。

もしも椎名さんに会えたらあげようかな、と一つはこれに即決し、他の種類も合わせて五人分買ってスーパーを出た。

ついさっきまで蒸し暑かった空気は、ついに降り出してしまった冷たい雨のおかげで冷やされている。



「うわ、早く行かなきゃ……!」



出来れば椎名さんにも会いたいし。そう思いながら走って車に乗り込んだ。