「人の携帯なんて見て得するもんじゃねーって、前からずっと忠告してただろ? バチが当たったんだよ」

「だってだって、気になって仕方なかったんだもん~~!! 最近やたら忙しそうにしてるし、エッチだって回数減ってるし……」



厨房に戻って一部始終を聞いた後、華麗な手つきで野菜を炒めながら呆れ顔で言う水野くんに、真琴ちゃんはキャベツを切りながらさめざめと泣く。

そんな彼女に、苦笑しながら園枝さんが質問した。



「彼は何をしてる人だったっけ?」

「デザイナーです……」

「じゃーきっとモデルの姉ちゃんとかとデキてるんじゃね? 黒だな」

「ひどーい涼ちゃぁん!!」



だばだばと目から涙をこぼす真琴ちゃんが哀れで、鍋を抱えた私は水野くんの後ろを通りつつフォローする。



「水野くん、そんな意地悪なこと言わなくても」

「じゃあちづはどう思うわけ? 黒か白か」

「うーん……黒に近いグレー」

「千鶴さんまで~~!!」



小さな声で言ったつもりが、真琴ちゃんにはバッチリ聞こえていたようで、天を仰いでさらに泣き続ける。

それが雨雲を呼んだのか、窓の外はいつの間にか黒い雲に覆われ、今にも雨が降り出しそうになっていた。