本心も弱い部分も、全部見せてほしい。

そうして私を必要としてくれたら、どんなに幸せだろうか。

少なくとも私は、もっとあなたに寄り添いたいよ。



「……大丈夫ですよ。私達は皆、椎名さんについていきますから」



部下だからとか、好きだからとか、私の場合そこには色々な感情が含まれているけれど。

椎名さんを信頼しているのは、ここの皆が同じだということをわかっていてほしい。



「ありがとう。いい部下を持って幸せだよ」

「それは椎名さんがいい上司だから」

「乗せ上手だね、君は」

「本当のことですよ!」



椎名さんは、はにかみながら少し照れたように首に手を当てていた。

部下という立場から抜け出せなくても、私は彼と共に歩いていけたら、それでいいのかもしれないな……。

温かくて心地良い空気は、外がすっかり暗くなり仕事が終わるまで、私達を包み込んでくれているような気がした。



──この日私が作成したメニュー表は、後日椎名さんが専務に渡して無事OKがもらえたらしい。

あの専務が何も文句を言わなかったのかは少し疑問だけれど。


とりあえず、あとは発注をミスなく行い、試作を重ねて当日に備えるのみ。

日を重ねるにつれて、私だけでなく皆の士気も高まっているように感じる。

これならきっと大丈夫だと、次第に自信は確かなものになっていた。