「もちろん成功させるつもりで入念な準備はするし、スルスの皆のことも信頼してる。だけど、俺もこんな仕事を任されるのは初めてだから不安はあるよ」



そうなんだ……。いつも余裕がありそうな椎名さんが、初めて弱気な心の内を見せたような気がした。



「……ちょっと意外です。専務に言った時は自信も余裕もあるんだなって感じたから」

「あれは、半分は意地で出た言葉だよ。俺は彼より下手の立場だけど、それでも負けられない気持ちがあるから」



椎名さんは伏せていた瞼を押し上げ、力強さを増した眼差しでどこかを見据えながら言い放つ。



「負けたくないんだ、男として」



──ドキン、と胸が鳴る。

彼の表情がとても勇ましくて。内に秘めたその意志が、とても熱く感じて、とても格好良いと思った。

じっと見つめていた私に顔を向けた彼は、表情を和らげて微笑む。



「個人的な感情を挟んじゃいけないんだけどな。上司の不安は皆にも伝染するだろうし、これはここだけの内緒にしといてね」

「……はい」



しっかりと頷いた私は、内心ドキドキしていた。私にだけ本音を語ってくれたことが嬉しくて。