負け犬も歩けば愛をつかむ。

コーヒーを淹れ直して、休憩室のテーブルの角を挟んで斜めに座り、私は遠慮なくクッキーをいただく。

椎名さんも胡座をかいてくつろいでいて、かなりのほほんとした雰囲気。


どうしたことだろう、この間の出来事はまるでなかったかのような、この和み具合は……。

まさかあれも夢だったとか? いやいや、そんなはずは……。

丁寧にアイシングされたハート型のクッキーをポリポリと噛み砕きながら、ぐるぐる考えていると。



「ねぇ、春井さんはどんなふうにプロポーズされたい?」

「っ、ごほごほっ!! ……え!?」



突然、何の前触れもなく椎名さんがそんな質問をしてきたので、私はクッキーを喉に詰まらせてむせた。

プ、プロポーズって!



「あぁ、ごめん突然。この間メルベイユの社員さんと話す機会があって、その時に聞いたんだけど……」



コーヒーでクッキーを流し込んでいた私は、その一言にピクリと反応する。

メルベイユの社員さんって、絶対九条さんのことよね!?

……と言いたい衝動をぐっと堪え、彼の話の続きを待つ。



「今度、記念日に女性への贈り物をする男性をターゲットに商品を考えることになって、今女性からアンケートを取ってるらしいんだ。その中に“プロポーズされる時に何が欲しいか”っていう質問があるらしいんだけど、君ならどう答えるんだろうと思って」



頬杖をつき、興味深げに私を見る椎名さん。

九条さんとそんな真面目な仕事の話もしてたんだ……。彼女が相談をしてたっていうのも、ただの口実じゃなかったのかも。