負け犬も歩けば愛をつかむ。

このチャラ男は、専門学校を卒業した後、県内では有名な高級ホテルの調理員として見事就職したものの。

そこでの厳しさに耐え切れず一年で退職し、うちの会社に中途で入ったらしい。


……つまり。

結婚に失敗した熟年のシングルマザー、
ダメ男とばかり付き合う万年恋に盲目娘、
一流企業から逃げ出したチャラ男、
そして結婚の“け”の字もない三十路オンナの私……

このラ・スルスは、負け犬(今のところ)の集まり、ということなのだ。


毎日、百人分程度の食事を作っている厨房職員は、この四人。

メルベイユと同じ土日休みだし、ランチしか提供しなくていいから、この少ない人数でもやっていける。

私がここに異動してきてまだ一ヶ月だけれど、この通りすでに馴染んでいるのは、きっと皆気が合うからなんだろう。



私はまず厨房を突っ切り、さっきとは違うドアを開けて、靴を履き変えてから食堂に出た。

厨房内の設備や内装はどこも似たようなものだけれど、ここから一歩出るとそこはお洒落なレストラン。


ここを利用するメルベイユの社員さん達は、なんだか皆輝いて見えるのよね。

雑貨屋だからなのか、皆センスがあって外見もお洒落だし、自分達の仕事に誇りを持っている感じがする。