“千鶴……”



──あ、だめ、椎名さん……

首筋から胸へと、彼の熱い唇が押し付けられるたびに、その部分は火傷しそうなほど熱くなる。


だめ、なんて嘘。

もっと触れてほしい。もっと深く、奥の方まで繋がりたい。

もっと私を求めてほしい──。

そんな情欲を露わにした目で彼を見つめると、優しく微笑んでまた唇を重ねてくれた。



“抱き合えば、お互いの寂しさも半分に出来るかな”



耳元で囁かれたその言葉で、彼は私ではない誰かを想っているのだということが思い出される。

急激に悲しみが膨れ上がって、閉じていた目を開くと。



“──君の恋は叶わないんだよ。残念だったね”



組み敷いた私を見下ろすのは、愛しい人ではなく、悪魔のような黒い笑みを浮かべる天羽薫だった。



「ぎゃあぁ~~っ!?」



雄叫びを上げた私の目の前には、椎名さんも専務もいなくて、広がる風景はいつもと変わらない自分の部屋。

アラームを設定していたスマホが、ぶるぶると震えながら音楽を奏でている。



「わ、私ってば、なんちゅー夢を……!」



ベッドの上で上体を起こし、状況を理解した私は、寝癖がついた頭をわしゃわしゃと掻いた。