「メルベイユの社員は皆、各々がこの仕事に確固たるプライドを持って取り組んでいる。はなから誰かに何かをしてもらおうという考えはないんだ。そういう“自分”をしっかり持った人間の集まりだから、上司についていくという概念がそもそもないんだろう。だからこそ、常に斬新なアイデアが生まれる」



監査の結果を記した書類をバサッと雑にデスクに置き、こちらを振り向いた専務は憎たらしく口角を上げる。



「一人では何も出来ず、群れたがる弱い犬のような君達とは違うんだよ」

「なっ……!」



何なのよこの人! いちいちカンに障るんだから!

メルベイユがそういう方針なのはわかったけれど、だからといって私達が間違っているとは思わない。

怒りが沸点に達した私は、ぐっと拳を握りしめて威嚇するように腹黒狼を睨みつける。



「仲間意識を持っちゃいけませんか? 皆で職場を良くしていこうって、協力し合うのはそんなに悪いことですか!?」

「いけないとも、悪いとも言っていない。ただ僕がそういうスタンスが嫌いなだけだ」

「ひ……ひねくれ者! 性格歪み過ぎ!」

「何とでも。君がどう言おうと、負け犬の遠吠えにしかならない」



こ~い~つ~~!!

相手がお客様であることも忘れ、キーッと憤慨する私。何を言っても勝てる気がしない自分にも腹が立つ!