「奈緒ちゃん!」


「あ、依田さん!」



最近、悠以外に仲良しになった人がいる。

それは、看護師の依田さん。


いつも明るくて、はきはきしていて。

彼女と話していると、嫌なことなんて忘れてしまうような、そんな人。



「ね、最近奈緒ちゃんって、悠と仲良しだよね!」


「え?……依田さん、悠のこと知ってるんですか?」



彼女は、楽しそうに笑う。



「知ってるよ!悠とはもう長い付き合いだからね。お父さんのこともだけど、その前から。」



そうなんだ……。

つまりは、お父さんが入院する前も、悠はここにいた。

何故だろう。



「悠がちっちゃくて可愛い頃から知ってる。その頃から憎まれ口ばっかりきいてたけど。」


「そうなんですね。」



でもさ、と言いながら、依田さんはいたずらっぽく笑った。



「悠は最近、よく笑うようになった。それに、ちょっと大人びたような気もするし。誰のおかげかなあ。」


「え?誰のおかげでしょうね。」


「奈緒ちゃん、あなたよ。」



依田さんは、私の隣に座って言った。



「悠は、奈緒ちゃんに会って救われた。」



驚く。

そんなこと……。



「救われてるのは、私の方です。依田さん。」


「それなら、これからも一緒にいればいいんじゃないの?ふたりはさー。」



依田さんが、勢いを付けてベッドから立ち上がる。

スカートのしわを伸ばして、そして、笑顔で私に向き直った。



「悠をよろしく、奈緒ちゃん。」



思わずうなずくと、依田さんは目を細めた。

そして、病室から出て行く。

うきうきしたその後ろ姿に首を傾げながら、私は悠の面影をそっと胸に描いた。