鈴実は答える。



彼女のその声音が、金管楽器の音色のように心地よかった。



「小冬ちゃんが、楽しそうに話してくれるのが嬉しくて」



小冬はほんの少しだけ言葉をためらい、下を向いたがすぐに顔をあげ、はにかんだ木漏れ日のような笑顔を見せた。



真っ直ぐに向けられた笑顔に、鈴実はいままで触れてきた表現がまったく歯が立たない想いを感じる。



その事実が、鈴実にはまた愛しい。





それから二人は、昼休みには図書室、それ以外の10分休みは教室でお喋りを楽しむようになった。



お喋りと言っても、ほぼ本についての語り合いだったが。



二人は意図せずに、自然とこのリズムを造り出していた。



鈴実の読書をしているときの表情は、変わった。


視線は活字を追うが、前のような規則性ある機械的な動きではなく、あたたかな眼差しになった。


その横顔は、以前にも増して小冬の心を掴んで離さない。



休日に二人が自然と会うようになるまでは、きっとあともう少し。






10分休みには何を?END