足取りは軽く、自然と歩幅もいつもより大きくなる。



踏み出される足はリズムを刻み、踊るように歩く。



まだ朝早く、時おり聞こえる車の走り去る音は、朝独特。



肺一杯に、朝の空気を吸い込んだ。



待ち合わせ場所に向かう者は、だれでも同じように心弾むのだろうか。



ただ彼女の場合は、少し特別だった。



久しぶりに友人に会える。



その想いのみが胸に広がっていた。



確かな人影を捉えた彼女の目はさらに光輝く。



上がる口角を、なんとか隠そうと下唇を噛み締めた。



走り出す。



先に着いていた少女も、彼女に気付き大きく手を振った。



「雫!!お待たせ」



「ハロー 、ヨウ。別に待ってないよ」



呼吸を整える楊子を、雫はやさしく見つめる。



「小学校卒業以来だね」


「雫背、伸びた?」



しっかりと横に並んでみれば、10センチはあったはずの身長差が縮まっていることに気付く。



でもまだ楊子の方が少し高い。



「まあね。中二ですもの」



「なーんか悔しいな」



「いまに追い越しちゃうかもよ?」



「それはあり得ないって」



二年の歳月など、彼女たちの前では無いも同然だった。



笑い合い、ゆっくり歩き出す。





「好きだったんだよ」



「なにが?」



まだ朝早いため、ファミリーレストランなどの類いは開店前。



二人は仕方なく近場の公園にいた。



ブランコとベンチくらいしかない、小さな公園。


変色した木製のベンチに腰かけると、楊子は静かに言葉を紡いだ。



「雫のことが」



どこか遠くを見つめ言う彼女の横顔は清々しく、なにかに追いつめられたような陰は全く見えない。



ただ淡々と真実を語るかのようなその雰囲気に、雫も呑まれるだけだ。