「ええっと、恋愛小説……かな」

恥ずかしそうに声を小さくして言う。

それはとても意外な答えだった。
なぜなら、鈴実の普段読んでいる本の内容とはおよそ考えられない答えだったからだ。

「へえー!どんな話なのか聞いてもいい?」

Γうん。ちょっとドロドロした感じの話なんだけど、主人公が――」

鈴実の話を聞いて納得した。
恋愛小説というからにはよくケータイ小説なんかである甘いラブストーリーをまっ先に思いついたのだが、そうだ、恋愛小説にも色々ジャンルがある。

「でね、親友に裏切られた主人公が憔悴しきっているときに、ある人に出会うの。」

「なるほど。その人に恋に落ちるんだね?」

彼女と話すようになってきてから、色々な本を読んできた小冬は、前よりもお話の展開がある程度読めるようになってきた。

鈴実は今まで見せたことのない表情で応えた。

Γな、なんでそこでニヤッとするの鈴実ちゃん!?」

鈴実は右の口角をにやりと上げたのである。

先ほど見せた上品な笑顔とはまったく違う表情に驚きと喜びを覚えた。