……と、昨日のことを思い出しながら小冬は歩いていた。
初夏の風が心地良い。

結局デート?の相手は女の子だということを言うタイミングを逃してしまった。

服は姉のアドバイスに従い、リボンのプリントの白の短めのTシャツに膝下丈の紺のスカートにした。

待ち合わせ場所までたどり着く。

すぐに見つけた。

長い黒髪を後ろで一つに束ねた少女。

鎖骨の見える白の七分丈のカットソーに黒のスキニーパンツ。

細身で美人の彼女によく似合っていた。

ふと、昨日の姉の言葉を思い出す。

“好きなんだ?そのこのこと”

少女が振り返る。

「小冬ちゃん、おはよ――って大丈夫!?
顔、真っ赤だよ?」

あ、鈴実ちゃんも驚くことがあるんだ。
また新しい発見をしたな。

小冬は真っ赤な顔で情けなく頬を緩ませた。



顔の赤い小冬を心配したのか、鈴実は近くのファミリーレストランに入ることを提案した。

「だいぶ赤みひいてきたね。本当に大丈夫?」

心配そうに鈴実が言う。

「うん!大丈夫、ありがとう。ちょっと信号の所で走ったから!」

勢いで口からでまかせを言った。

すると鈴実は怪訝な顔をした。

「汗一つかいてないのに」

「私汗あんまりかかない体質なんだよねー!」

言った後で後悔した。
さて、自分はなぜこんなにも焦っているのか。
先ほどから下手な嘘が口から飛び出していく。